解約返戻金とは?貯蓄型保険を選ぶ前に知っておくべきこと

解約返戻金とは?貯蓄型保険を選ぶ前に知っておくべきこと

「保険に加入しているけれど、解約返戻金がどのように変わるのかよくわからない…」

「貯蓄型保険を検討しているけど、途中解約したらどうなるの?」

そんな疑問をお持ちではありませんか?

この記事では、貯蓄型保険における解約返戻金(かいやくへんれいきん)の仕組みをわかりやすく説明し、解約時に受け取る金額やタイミングについて詳しく解説します。

保険選びの際に避けては通れないポイントとなる解約返戻金。

その基本を理解することで、よりご自身に合った保険選びができるようになるはずです。

ぜひこの機会に、解約返戻金についての知識を深めていきましょう。

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目次


解約返戻金とは?基本的な仕組みを解説

まずは、解約返戻金そのものについて、基本的なところから見ていきましょう。

解約返戻金の意味とは?

解約返戻金とは、言葉の通り、保険契約を解約した際に、保険会社から契約者に戻ってくるお金のことです。

払い込んだ保険料のすべてが戻ってくるわけではなく、また、すべての保険に解約返戻金があるわけでもありません。

主に、終身保険、養老保険、個人年金保険、学資保険といった貯蓄性のある保険に設定されています。

これらの保険では、支払った保険料の一部が、将来の保険金支払いや満期保険金のために積み立てられています。

解約時には、この積み立てられた部分から、保険会社の経費などを差し引いた金額が解約返戻金として支払われるのが一般的です。

一方で、定期保険や医療保険などのいわゆる「掛け捨て型」の保険には、解約返戻金がないか、あってもごくわずかな場合が多いです。


▼ 解約返戻金の有無による保険タイプの違い(イメージ)

保険の種類 解約返戻金の有無 主な特徴
貯蓄型保険 (例:終身保険) 多くの場合、有り 保障と貯蓄の両方の機能を持つ
掛け捨て型保険 (例:定期保険) 無いか、あってもごくわずか 一定期間の保障に特化し、保険料が比較的割安

解約返戻金の額は、

  • 加入している保険の種類
  • 契約からの経過年数
  • 保険料の払込期間や金額
  • 契約時の予定利率
  • 解約時の市場金利(外貨建て保険の場合など)

など、さまざまな要因によって変動します。

つまり、解約返戻金は、貯蓄型保険の「貯蓄」部分に関わる重要な要素であり、その性質を理解しておくことが、保険を賢く選ぶための第一歩と言えるでしょう。

解約返戻金が支払われるタイミング

解約返戻金が支払われる主なタイミングは、以下の通りです。

  1. 契約の途中で解約した場合
    保険契約の有効期間中に、契約者の意思で解約を申し出た場合に支払われます。
    これが最も一般的なケースです。

  2. 「払済保険」に変更した後、解約した場合
    保険料の支払いが困難になった場合などに、それまでの解約返戻金を元にして、保険期間をそのままに保障額の少ない保険(払済保険)に変更することができます。この払済保険をさらに解約した場合にも、解約返戻金が支払われることがあります。

  3. 「延長保険(延長定期保険)」に変更した後、解約した場合
    同様に、解約返戻金を元に、保障額をそのままに保険期間を短縮する延長保険に変更することも可能です。この延長保険を解約した場合も、解約返戻金が支払われるケースがあります。
    (ただし、延長保険には解約返戻金がない場合もあります。)

  4. 保険料の払込が不能となり「自動振替貸付」が利用された後、貸付額と利息が解約返戻金を上回り失効・解約となった場合
    保険料の支払いが滞った際に、解約返戻金の範囲内で保険会社が自動的に保険料を立て替える「自動振替貸付制度」があります。この貸付額と利息の合計が解約返戻金額を超えてしまうと、契約が失効し、その時点で残っていた解約返戻金(もしあれば)が精算される形で支払われるか、あるいは支払うべき金額が発生することもあります。

多くの場合、「契約者からの申し出による途中解約」で解約返戻金を受け取ることになるでしょう。

受け取り手続きは、通常、保険会社に連絡し、所定の書類を提出することで行われます。


貯蓄型保険の解約返戻金、受け取る金額はどれくらい?

では、実際に解約返戻金はいくらくらい受け取れるのでしょうか。

これは保険契約者にとって非常に気になるポイントです。

返戻金の計算方法と影響を与える要素

解約返戻金の具体的な計算方法は、保険会社や保険商品、契約内容によって異なります。

一般的に、公開されている計算式で個人が正確な金額を算出するのは難しいでしょう。

しかし、どのような要素が金額に影響を与えるのかを知っておくことは重要です。

主な要素は以下の通りです。

  • 払込保険料総額:
    当然ながら、払い込んだ保険料の総額が多いほど、解約返戻金の原資も大きくなる傾向にあります。

  • 契約からの経過年数:
    契約してからの期間が短いほど、解約返戻金は少なく、多くの場合、払い込んだ保険料総額を下回ります(元本割れ)。
    逆に、長期間継続しているほど、解約返戻金は増えていき、払込保険料総額を上回る可能性も出てきます。

  • 保険の種類と設計:
    貯蓄性が高い保険ほど、解約返戻金の返戻率(払込保険料総額に対する解約返戻金の割合)が高くなる傾向があります。
    また、低解約返戻金型終身保険のように、保険料払込期間中の解약返戻金を低く抑える代わりに、保険料を割安にしている商品もあります。このタイプの場合、払込期間満了後は返戻率が大きく上昇する設計になっていることが多いです。

  • 予定利率:
    契約時に保険会社が約束する運用利回りである「予定利率」も影響します。予定利率が高い時代に契約した保険は、相対的に解約返戻金も有利になる傾向があります。

  • その他:
    契約者貸付を受けている場合は、その元利金が差し引かれます。また、外貨建て保険の場合は、解約時の為替レートによって円換算での受取額が大きく変動します。


▼ 解約返戻金の推移イメージ(一般的な例)

  金額↑
      |      / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄(解約返戻金額)
      |    /
      |  /
      | /
      |/_________________(払込保険料累計額)
      |
      ┼───────────────────→ 経過年数
      0      短期            中期            長期
    

(注:上記はあくまで一般的なイメージであり、実際の推移は保険商品によって大きく異なります)


具体的な金額を知りたい場合は、保険会社から送られてくる「契約内容のお知らせ」などで確認するか、直接保険会社や担当者に問い合わせるのが最も確実です。

最近では、保険会社のウェブサイトの契約者専用ページでシミュレーションできる場合もあります。

途中解約時の返戻金が少ない理由

「保険料をちゃんと払ってきたのに、どうして途中で解約すると戻ってくるお金が少ないの?」

これは多くの方が抱く疑問です。

特に契約初期の段階では、解約返戻金が払込保険料総額を大きく下回ることが一般的です。

その主な理由は、保険会社が契約の締結・維持のために必要な経費(事業費)を、払い込まれた保険料から早い段階で差し引いているためです。

事業費には、

  • 保険契約の締結にかかる費用(人件費、広告費、代理店手数料など)
  • 保険契約の維持・管理にかかる費用(保険料収納、契約者への通知など)
  • 死亡保障などの純粋な保障に充てられる費用

などが含まれます。

これらの費用は、契約初期に重点的に充当される傾向があるため、積立に回る保険料の割合が相対的に少なくなり、結果として解約返戻金も少なくなるのです。

イメージとしては、保険料の一部は「保障」を買うための費用として消費され、残りの一部が「貯蓄」として積み立てられていくと考えると分かりやすいかもしれません。

特に、保険期間の初期は、この「保障を買うための費用」や「契約にかかる初期費用」の割合が大きいため、貯蓄部分がなかなか増えないのです。

したがって、貯蓄型保険は、短期での解約を前提とせず、長期的な視点で加入を検討することが非常に重要です。


解約返戻金を受け取るタイミングと注意点

解約返戻金の仕組みが分かってくると、次に気になるのは「いつ解約するのが得なのか?」「解約する際に気を付けることは?」といった点でしょう。

最適な解約タイミングを見極める方法

解約返戻金をできるだけ多く受け取る、あるいは損を少なくするための「最適な」タイミングは、一概には言えません。

なぜなら、それは個々の契約内容やライフプラン、経済状況によって異なるからです。

しかし、判断材料となるポイントはいくつかあります。

  1. 解約返戻金の返戻率を確認する:
    保険証券や設計書、保険会社からの「契約内容のお知らせ」などで、現時点での解約返戻金額と、将来の解約返戻金の推移を確認しましょう。
    特に、払込保険料総額と解約返戻金額が同等になる時期(損益分岐点)や、返戻率が100%を超える時期は一つの目安になります。

  2. 保険料払込満了のタイミング:
    一般的に、保険料の払込期間が満了すると、解約返戻金の返戻率が大きく上昇する商品が多いです。
    特に「低解約返戻金型」の保険では、この傾向が顕著です。
    もし解約を検討していて、保険料払込満了が近い場合は、それまで継続することも選択肢の一つです。

  3. ライフイベントとの照らし合わせ:
    子どもの進学、住宅購入、退職など、まとまった資金が必要となるライフイベントに合わせて解約を検討することもあるでしょう。
    ただし、そのタイミングが必ずしも返戻率が高い時期と一致するとは限りません。
    保障の必要性と、資金ニーズ、そして解約返戻金のバランスを総合的に考える必要があります。

  4. 他の金融商品との比較:
    もし保険を見直して他の運用方法に切り替えたい場合、解約返戻金の額と、その資金を他の金融商品で運用した場合の期待リターンを比較検討することも重要です。
    ただし、保険には保障機能があるため、単純な利回り比較だけでなく、保障がなくなることのリスクも考慮に入れる必要があります。


どうしても途中で資金が必要になった場合の代替手段として、「契約者貸付制度」を利用する方法もあります。

これは、解約返戻金の一部を上限として、保険会社からお金を借りられる制度です。

解約するわけではないので保障は継続されますが、貸付金には利息がかかります。

安易な解約を避けるための一つの選択肢として覚えておくとよいでしょう。

(ご参考:生命保険文化センター「契約者貸付を受けたら」

解約時に知っておくべき注意点

貯蓄型保険の解約を検討する際には、いくつか注意しておきたい点があります。

  1. 元本割れの可能性:
    特に契約初期や保険料払込期間中に解約すると、解約返戻金が払込保険料総額を下回る、いわゆる「元本割れ」となる可能性が高いです。
    「貯蓄のつもりで始めたのに損をしてしまった」ということにならないよう、解約のタイミングは慎重に判断する必要があります。

  2. 保障がなくなる:
    当然ですが、保険を解約すると、その保険が提供していた死亡保障や医療保障などはすべて失われます。
    もし解約後に新たな保険に加入しようとしても、その時の健康状態や年齢によっては、加入できなかったり、保険料が割高になったりする可能性があります。
    本当に保障が不要なのか、代替手段はあるのかを十分に検討しましょう。

  3. 解約手続きには時間がかかる場合がある:
    解約の申し出から実際に解約返戻金が支払われるまでには、数日から数週間程度かかるのが一般的です。
    急な資金ニーズに対応するために解約を考えている場合は、手続きにかかる時間も考慮に入れておきましょう。

  4. 税金がかかる場合がある:
    解約返戻金を受け取った際に、その金額が払込保険料総額を上回り、利益が出た場合(一時所得)、税金(所得税・住民税)がかかることがあります。
    一時所得には50万円の特別控除があるため、利益が50万円以下であれば基本的に課税されません。
    契約者と受取人が異なる場合は贈与税の対象となることもあります。
    詳しくは、税務署や税理士にご確認ください。
    (ご参考:国税庁「No.1490 一時所得」

  5. 契約内容をしっかり確認する:
    解約する前に、必ず保険証券や約款で契約内容を再確認しましょう。
    特に、解約返戻金の計算基準日(いつの時点の金額が適用されるか)や、特約の扱いなどを確認しておくことが大切です。

安易な解約はデメリットも大きいため、本当に解約が最善の選択なのか、専門家(保険会社の担当者やファイナンシャルプランナーなど)に相談することも有効です。


まとめ:自分に合った貯蓄型保険を選ぼう

ここまで、解約返戻金の基本的な仕組みから、受け取る金額、タイミング、注意点について解説してきました。

解約返戻金を理解して、より良い保険選びをしよう

貯蓄型保険を検討する上で、解約返戻金は非常に重要なチェックポイントです。

月々の保険料だけでなく、将来受け取れる可能性のある解約返戻金の推移や、途中解約した場合の条件などをしっかりと理解することが、後悔しない保険選びにつながります。

  • 短期で解約すると元本割れのリスクが高いこと
  • 解約返戻金の額は契約からの経過年数や商品によって大きく異なること
  • 解約すると保障も失われること

これらの点を念頭に置き、ご自身のライフプランや資金計画と照らし合わせながら、慎重に検討しましょう。

保険選びは、時に複雑で難しいと感じるかもしれません。

しかし、早くから関心を持ち、基本的な知識を身につけることで、より多くのメリットを享受できる可能性があります。

例えば、若いうちに長期的な視点で貯蓄型保険に加入すれば、月々の保険料負担を抑えつつ、将来への備えを計画的に進めることも可能です。

ご自身の目的(保障重視なのか、貯蓄重視なのか、あるいはその両立か)を明確にし、それに合った保険商品を選ぶことが何よりも大切です。

そして、その過程で解約返戻金がどのような役割を果たすのかを理解していれば、より納得感のある選択ができるはずです。

この記事が、あなたの保険選びの一助となれば幸いです。



免責事項:
この記事は、解約返戻金に関する一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品を推奨するものではありません。また、税務に関する記述は一般的な内容であり、具体的な税務処理については税理士や所轄の税務署にご相談ください。保険の契約や解約に関する最終的な決定は、ご自身の判断と責任において行うようにしてください。必要に応じて、保険会社やファイナンシャルプランナーなどの専門家にご相談されることをお勧めします。

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