出産・育児にかかるお金はいくら?共働き夫婦が知っておきたい公的支援まとめ【2025年最新版】
出産・育児にかかるお金はいくら?共働き夫婦が知っておきたい公的支援まとめ【2025年最新版】
「妊娠おめでとう!」
喜びと同時に、ちょっぴり胸に広がる漠然とした不安。初めての出産を控えた共働きのご夫婦なら、特に「これからどれくらいお金がかかるんだろう?」という疑問や心配を抱えているかもしれません。
- ベビー用品は何をどれだけ揃えればいい?
- 産休・育休中の収入は大丈夫?
- 出産費用ってそんなに高額なの?
働きながら家計を支えてきた二人にとって、ライフスタイルが大きく変わる出産・育児は、お金の面でも未知数なことが多いですよね。インターネットやSNSを見ると、「出産で〇〇万円かかった」「育児グッズに△△万円使った」といった情報が飛び交い、さらに不安が募ることもあるかもしれません。
でも、ご安心ください。
実は、妊娠・出産・育児に関しては、国や自治体による様々な公的支援制度が用意されています。これらの制度を上手に活用すれば、家計の負担をかなり軽くすることができるんです。知っているか知らないかで、受けられるサポートは大きく変わってきます。
本記事では、出産準備期間から育児が始まるまでの具体的な費用内訳を解説するとともに、共働きのご夫婦が活用できる公的支援制度を網羅的にご紹介します。2025年現在利用できる最新の情報に基づき、各制度の条件や金額、申請方法までをわかりやすく解説します。
この記事を最後まで読めば、出産・育児にかかるお金の全体像が把握でき、利用できる支援制度が明確になります。漠然としたお金の不安を解消し、安心して赤ちゃんを迎えるための第一歩を踏み出しましょう。
出産にかかるお金の全体像【妊娠中〜出産まで】
赤ちゃんがお腹に宿ってから生まれてくるまでには、様々な費用が発生します。主なものは「妊婦健診費用」と「出産・入院費用」です。それぞれ詳しく見ていきましょう。
妊婦健診(平均10〜15回)にかかる費用と補助の仕組み
妊娠初期から出産までの妊婦健診は、お母さんと赤ちゃんの健康状態を確認するための重要なもの。厚生労働省は標準的な妊婦健診の回数を14回と定めていますが、初産婦さんや母体に持病がある場合などは、これより回数が増えることもあります。
妊婦健診は基本的に健康保険が適用されない「自費診療」です。1回あたりの費用は、医療機関や検査内容によって異なりますが、概ね5,000円〜1万円程度、初期の精密検査や後期になると1万円〜数万円かかることもあります。全額自己負担となると、合計で10万円前後、場合によってはそれ以上の費用がかかる可能性があります。
しかし、この妊婦健診費用には公的な補助があります!それが「妊婦健康診査費用助成制度」です。お住まいの自治体から「妊婦健康診査受診票(補助券)」が交付され、これを利用することで健診費用の一部または全額が助成されます。
補助券の枚数や1回あたりの補助金額は自治体によって異なりますが、標準的な健診回数をカバーできるよう14枚程度交付されるのが一般的です。ただし、補助券の金額を超えた分や、里帰り出産などで補助券が使えない医療機関を受診した場合などは自己負担となります。妊娠がわかったら、早めに自治体の担当窓口に妊娠届を提出し、母子健康手帳と一緒に補助券を受け取りましょう。
出産費用の平均(自然分娩・帝王切開・無痛分娩など)
出産にかかる費用は、分娩方法や入院日数、医療機関の種類(総合病院、個人病院、助産院など)、個室利用の有無、休日・深夜加算などによって大きく異なります。
厚生労働省の資料によると、正常分娩の平均費用は約50万円程度とされています(差額ベッド代等を除く)。
- 自然分娩: 正常な経過をたどった場合、最も一般的な分娩方法です。費用は医療機関によって幅がありますが、概ね40万円~60万円程度です。
- 帝王切開: 医学的な理由により帝王切開となった場合は、病気とみなされるため健康保険が適用されます。自己負担割合(通常3割)に応じた支払いとなりますが、「高額療養費制度」の対象となるため、所得に応じた自己負担限度額を超えた分は払い戻されます。ただし、差額ベッド代や特別な処置の費用などは保険適用外となる場合があります。費用総額としては50万円〜70万円以上となることが多いですが、高額療養費制度を適用すると自己負担額は抑えられます。
- 無痛分娩: 麻酔などを用いて痛みを和らげる分娩方法です。自然分娩の費用に加えて、麻酔の費用が上乗せされます。医療機関によって大きく異なりますが、追加で10万円〜20万円程度かかることが多いようです。無痛分娩を選択できる医療機関は限られています。
入院期間は、自然分娩で4~6日、帝王切開で6~10日程度が一般的です。個室や特別な食事などを希望すると、別途費用がかかります。
出産費用は高額に感じますが、次の「出産育児一時金」で大部分がカバーできます。
出産育児一時金の金額と条件(2025年最新版)
出産育児一時金は、出産にかかる経済的負担を軽減するために、健康保険から支給される一時金です。
2025年現在、赤ちゃん1人あたり一律50万円が支給されます。(産科医療補償制度に加入している医療機関での出産の場合。それ以外の場合は48.8万円となりますが、ほとんどの分娩機関が加入しています。)
この制度は、健康保険の被保険者または被扶養者であれば、出産した方が誰でも受け取れます。妊娠4ヶ月(85日)以上の出産であれば、死産・流産の場合でも支給対象となります。
出産育児一時金の受け取り方には主に以下の3つの方法があります。
- 直接支払制度: 医療機関が被保険者に代わって出産育児一時金を受け取る制度です。これにより、退院時に支払う出産費用から50万円が差し引かれます。多くの医療機関でこの制度を利用できます。手続きは医療機関で行い、出産育児一時金で足りなかった分だけを窓口で支払います。50万円より出産費用が少なかった場合は、加入している健康保険組合などに申請すれば差額が支給されます。
- 受取代理制度: 小規模な医療機関などで直接支払制度が利用できない場合に使える制度です。事前に申請しておくことで、医療機関が被保険者に代わって出産育児一時金を受け取ることができます。
- 産後申請: 一度自身で出産費用全額を医療機関に支払い、その後、加入している健康保険組合などに申請して出産育児一時金を受け取る方法です。立て替えが必要になりますが、好きな方法で受け取れます。
直接支払制度を利用すれば、退院時に多額の現金を用意する必要がなくなるため、非常に便利です。出産予定の医療機関でどの制度が利用できるか事前に確認しておきましょう。
入院・分娩費用をカバーできる?超えたらどうなる?
前述の通り、出産育児一時金として赤ちゃん1人あたり50万円が支給されます。自然分娩の平均費用が約50万円であることから、出産育児一時金で入院・分娩費用の大部分、あるいは全額がカバーできるケースが多いです。
しかし、個室利用、休日・深夜加算、特別な処置、帝王切開での保険適用外費用、無痛分娩の費用などがかさむと、50万円を超える場合があります。
出産費用が50万円を超えた分は、自己負担となります。
例えば、出産費用が55万円だった場合、出産育児一時金で50万円がカバーされ、残りの5万円が自己負担となります。
自己負担分については、民間の医療保険や生命保険の「入院給付金」や「手術給付金」が対象となる場合があります。特に帝王切開は手術とみなされるため、給付金が支払われる可能性が高いです。加入している保険の内容を確認してみましょう。
また、高額療養費制度は、あくまで病気や怪我の治療にかかる医療費(保険適用分)が対象となる制度です。正常分娩は病気ではないため、出産費用そのものは高額療養費制度の対象にはなりません。ただし、帝王切開や吸引分娩、微弱陣痛促進剤の使用など、医学的な処置が行われた場合の保険適用分については、高額療養費制度の対象となることがあります。
妊娠・出産は予測不能なことも多いため、出産費用が50万円を超える可能性も考慮し、多少の貯蓄をしておくと安心です。
育児にかかる初年度の費用とは
無事赤ちゃんが生まれた後、いよいよ本格的な育児がスタートします。生まれたばかりの赤ちゃんとの生活には、様々な育児グッズやサービスが必要となり、これにも費用がかかります。特に赤ちゃんが生まれてからの1年間は、買い揃えるものが多く、出費がかさむ時期です。
おむつ、ミルク、肌着・ベビー服などの初期費用
赤ちゃんのお世話に欠かせない消耗品や衣類。これらは継続的に費用がかかります。
- おむつ: 新生児の頃は1日に10回以上おむつを替えることも。紙おむつ代は月々5,000円~1万円程度かかることが多いです。布おむつを使う場合は初期費用(おむつ、カバー、つけ置きバケツなど)がかかりますが、ランニングコストは抑えられます。
- ミルク: 母乳育児の場合はほとんどかかりませんが、粉ミルクや液体ミルクを利用する場合は、月々5,000円~1万円程度かかります。哺乳瓶や消毒グッズも必要です。
- 肌着・ベビー服: 赤ちゃんの成長は早く、すぐにサイズアウトします。最低限必要な枚数を揃え、買い足していくのがおすすめです。新生児期は短肌着やコンビ肌着が中心。退院着やお宮参り用のセレモニードレスなども必要に応じて用意します。最初にある程度揃えるのに数万円程度かかることが多いです。
- その他の消耗品: おしりふき、スキンケア用品(保湿剤、ベビーソープなど)、洗濯洗剤(ベビー用)なども毎月費用がかかります。
これらの消耗品だけで、月々1万円〜2万円程度の費用を見込んでおくと良いでしょう。
ベビーカー・チャイルドシート・ベビーベッドなど大型アイテム
育児をスムーズに進めるために必要な大型アイテムもいくつかあります。これらは購入費用がかかりますが、一度購入すれば長く使えるものが多いです。
- ベビーカー: お出かけに必須のアイテム。種類が多く、価格もピンキリですが、2万円~10万円以上と幅があります。セカンドベビーカーを購入する人もいます。
- チャイルドシート: 退院時から必要となる、車での移動に不可欠なアイテム。新生児から使えるタイプで2万円~5万円程度。義務付けられているため、必ず用意しましょう。
- ベビーベッド: 寝室で安全に赤ちゃんを寝かせるために使用します。レンタルや中古品も選択肢にあります。購入する場合、1万円~5万円程度。
- 抱っこひも: 外出時や家の中で赤ちゃんを抱っこする際に重宝します。様々な種類があり、1万円~3万円程度。
その他、バウンサー、ハイローチェア、ベビーバスなども必要に応じて購入を検討します。これらの大型アイテムを全て新品で揃えようとすると、合計で10万円~30万円程度かかることも珍しくありません。フリマアプリやリサイクルショップ、知人からのお下がりなどを活用することで費用を抑えることが可能です。
保育園・認可外保育の費用
共働きのご夫婦にとって、育児休業からの復帰を考える上で重要になるのが保育園の費用です。
2019年10月から「幼児教育・保育の無償化」がスタートし、3歳以上のすべての子どもと、0歳~2歳クラスの住民税非課税世帯の子どもは、認可保育園や一部の認可外保育施設の保育料が無償化されています。
しかし、0歳~2歳クラスで住民税課税世帯の場合は、引き続き保育料がかかります。 保育料は、世帯の所得や自治体によって異なりますが、月々2万円~5万円程度かかるのが一般的です。また、無償化の対象外となる延長保育料や、給食費・行事費などの実費負担も発生します。
認可外保育施設を利用する場合、無償化の対象となるのは自治体が定める上限金額(月額3.7万円など)までとなることが多く、それ以上の費用は自己負担となります。
保育料は、子どもの預け先や世帯の状況によって大きく変わる費用項目です。お住まいの自治体のウェブサイトなどで詳細を確認しましょう。
医療費(赤ちゃんの健診・予防接種)と公費助成
赤ちゃんは定期的な健康診査(健診)と予防接種が必要です。
- 乳幼児健診: 1ヶ月、3~4ヶ月、6~7ヶ月、9~10ヶ月、1歳など、定期的に自治体による無料の健診が実施されます。これは費用がかかりません。ただし、集団健診に行けず個別の医療機関で受診する場合や、自治体の指定以外の健診を受ける場合は自己負担となることがあります。
- 予防接種: ヒブ、肺炎球菌、B型肝炎、ロタウイルス、四種混合、BCG、麻しん・風しん混合(MR)、水痘、おたふくかぜ(任意)など、様々な予防接種があります。法定の定期接種は、自治体からの予診票を使うことで原則として無料で受けられます。ただし、接種時期を過ぎてしまった場合や、任意接種の予防接種(おたふくかぜ、インフルエンザなど)は自己負担となります。
これらの健診や予防接種以外で、赤ちゃんが病気や怪我をして医療機関を受診した場合、医療費がかかります。しかし、ほとんどの自治体で「子ども医療費助成制度」が導入されており、乳幼児の医療費自己負担分が助成されます。詳細は後述します。
共働き家庭が受けられる公的支援まとめ
共働きのご夫婦が、安心して出産・育児に臨み、キャリアを継続していくために役立つ公的支援制度は複数あります。ここでは代表的な制度を詳しく解説します。
出産手当金:条件・金額・申請方法
出産手当金は、会社員や公務員など、健康保険に加入している女性が出産のために会社を休み、その間の給与が支払われない場合に支給される制度です。これは、出産によって収入が途絶えることへの経済的支援です。
- 対象者:
- 健康保険の被保険者本人であること。(夫の扶養に入っている場合は対象外です。パートやアルバイトでも、健康保険の被保険者であれば対象となります。)
- 妊娠4ヶ月(85日)以降の出産であること(死産・流産・人工妊娠中絶も含む)。
- 出産のために労務に服さなかった期間があること。
- その期間、会社から給与が支払われていない、または給与が支払われていても出産手当金の額より少ないこと。
- 支給期間: 出産日以前42日間(多胎妊娠の場合は98日間)、出産日後56日間のうち、会社を休んだ期間。出産日は「出産日以前の期間」に含まれます。
- 金額: 1日あたりの金額は、「支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額」÷ 30日 × 3分の2 で計算されます。おおよそ、休業前の賃金の3分の2程度が支給されるイメージです。
- 申請方法: 勤務先の担当部署(人事・総務など)に相談し、必要書類を提出します。健康保険組合などに直接申請する場合もあります。必要書類は、申請書、医師または助産師の証明書、母子健康手帳のコピーなどです。申請は、産前休業または産後休業期間中、または期間終了後に行えます。時効は労務に服さなかった日ごとに、その翌日から2年です。
共働きのご夫婦の場合、妻が被保険者であればこの制度を利用できます。育児休業給付金と合わせて、休業中の家計を支える重要な収入源となります。
育児休業給付金:育休中の収入をカバーできる制度
育児休業給付金は、雇用保険に加入している方が、原則として子どもが1歳になるまで(一定の要件を満たせば最長2歳まで)、育児のために休業した場合に支給される制度です。これは、育児と仕事の両立を支援するための制度です。共働きのご夫婦の場合、夫も妻もそれぞれが育児休業を取得し、給付金を受け取ることができます。
- 対象者:
- 雇用保険の被保険者であること。
- 育児休業開始日前の2年間に、賃金支払いの対象となる日数が11日以上ある月が12ヶ月以上あること。(または、休業開始日前の2年間に、賃金支払いの基礎となった時間数が80時間以上の月が12ヶ月以上あること。)
- 育児休業期間中に、休業開始前の賃金の8割以上の賃金が支払われていないこと。
- 休業している日数が、1支給単位期間(原則1ヶ月)に10日(10日を超える場合は就業している時間が80時間)以下であること。
- 育児休業期間終了後に、継続して就業する意思があること。
- 支給期間: 原則、子どもが1歳になるまで。保育所に入れないなどの理由があれば、1歳6ヶ月まで、さらに2歳まで延長可能です。父母ともに育児休業を取得する場合は、「パパ・ママ育休プラス」制度により、子どもが1歳2ヶ月になるまでの間に、それぞれ最大1年間(父母合わせて最大1年間+2ヶ月)育児休業を取得できます。
- 金額:
- 育児休業開始から180日目までは、休業開始前の賃金日額 × 支給日数 × 67%
- 育児休業開始から181日目以降は、休業開始前の賃金日額 × 支給日数 × 50%
- 申請方法: 勤務先の担当部署(人事・総務など)を通してハローワークに申請するのが一般的です。必要書類は、育児休業給付金支給申請書、母子健康手帳のコピー、住民票、賃金台帳、出勤簿などです。申請は原則として2ヶ月に1回、事業主経由で行われます。
夫も育休を取得することで、育児の負担を分担できるだけでなく、経済的な支援も受けられます。共働き夫婦にとって、夫の育休取得は大きなメリットがあります。
児童手当:いつからいくらもらえる?2025年改定内容
児童手当は、中学校卒業までの国内に住所を有する児童を養育している方に支給される手当です。子どもの健やかな育ちを社会全体で応援するための制度です。
【2024年12月支給分からの主な改定内容(2025年時点の制度として適用)】
- 支給対象: これまでの「中学校卒業まで(15歳到達後の最初の3月31日まで)」から、「高校卒業まで(18歳到達後の最初の3月31日まで)」 に延長されます。
- 所得制限: これまでの「所得制限限度額」と「所得上限限度額」が撤廃され、所得制限がなくなります。 全ての所得階層の児童が対象となります。
- 支給月額:
- 0歳~2歳: 月額15,000円
- 3歳~高校生(第1子・第2子): 月額10,000円
- 3歳~高校生(第3子以降): 月額30,000円
- 支給時期: これまでの年3回(6月、10月、2月)から、年6回(偶数月) に変更され、よりきめ細やかな支給となります。
申請方法: 出生や転入から15日以内に、お住まいの市区町村に「認定請求書」を提出する必要があります。申請が遅れると、遅れた月分の手当が受けられなくなる場合があるので注意が必要です。必要書類は、請求者の健康保険証のコピー、請求者名義の振込先口座のわかる書類(通帳など)、印鑑などです。マイナンバー制度により添付書類が簡略化される場合もあります。公務員の方は、勤務先から支給されるため勤務先に申請します。
児童手当は、子どもの成長に合わせた学用品費や習い事の費用などに充てることができる、家計にとって非常にありがたい支援です。2024年12月からの改定により、対象年齢の拡大、所得制限の撤廃、第3子以降の手当増額など、より多くの家庭で手厚い支援を受けられるようになります。
医療費助成(子ども医療費助成制度の地域差)
子ども医療費助成制度は、子どもが病気や怪我で医療機関を受診した際の医療費自己負担分を、自治体が助成する制度です。これにより、医療費の窓口負担が無料または少額になります。
- 対象者: お住まいの市区町村に住民登録をしている子ども。
- 対象年齢: 多くの自治体で中学校卒業までを対象としていますが、高校卒業まで、あるいは18歳到達後最初の3月31日までを対象としている自治体も増えています。自治体によって差が大きい部分です。
- 自己負担: 医療費の自己負担分が「全額助成」となる自治体も多いですが、一部自己負担(例:1回あたり500円など)がある自治体もあります。また、入院・外来で取り扱いが異なる場合もあります。
- 所得制限: 以前は多くの自治体で所得制限がありましたが、近年は所得制限を撤廃する自治体が増えています。ただし、一部の自治体では所得制限が残っている場合もあります。
- 申請方法: お住まいの市区町村に申請し、「医療費受給者証」の交付を受けます。医療機関を受診する際に、健康保険証と一緒にこの受給者証を提示することで助成を受けられます。
この制度のおかげで、子どもの急な発熱や怪我の際も、医療費の心配をすることなく安心して受診できます。自治体によって対象年齢や自己負担額、所得制限の有無が異なるため、必ずお住まいの自治体の情報を確認してください。
保育料無償化と対象条件
「幼児教育・保育の無償化」により、保育料の負担が軽減されました。
- 対象:
- 3歳クラス~5歳クラスのすべての子ども: 認可保育園、認定こども園、幼稚園などの保育料が原則無償化されます。
- 0歳クラス~2歳クラスの住民税非課税世帯の子ども: 認可保育園、認定こども園などの保育料が原則無償化されます。
- 対象施設:
- 認可保育園、認定こども園、幼稚園
- 企業主導型保育事業
- 認可外保育施設(自治体から「特定子ども・子育て支援施設等」として確認を受けた施設。ただし、無償化には上限額があります。)
- 対象外となる費用:
- 延長保育料
- 給食費(主食費・副食費) - ただし、年収360万円未満相当世帯の子どもや、第3子以降の子どもは副食費が免除されます。
- 行事費、送迎費などの実費負担分
共働きのご夫婦で、0歳~2歳のお子さんを認可保育園などに預ける場合、世帯の所得によっては保育料がかかる可能性があるため注意が必要です。3歳以降は原則無償となりますが、副食費などの実費負担は発生します。無償化の詳細は、お住まいの自治体や利用を検討している施設にご確認ください。
支援制度をしっかり受け取るために必要な準備
様々な公的支援制度があることがわかりましたが、「知っている」だけでは受け取ることはできません。制度を漏れなく、スムーズに受け取るためには事前の準備と適切な手続きが必要です。
申請タイミングと必要書類一覧
それぞれの制度には申請できる期間やタイミング、そして必要な書類が定められています。これを把握しておくことが、支援を確実に受け取るための鍵です。
主な制度の申請タイミングと必要書類(一般的な例)
制度名 | 申請タイミング | 主な必要書類 |
---|---|---|
妊婦健診費用助成 | 妊娠がわかったらすぐ(妊娠届提出時) | 妊娠届、本人確認書類、マイナンバー関連書類 |
出産育児一時金 | 出産後(直接支払制度・受取代理制度の場合は出産前からの手続き) | 支給申請書、医師または助産師の証明書、母子健康手帳のコピー、健康保険証、振込先口座のわかる書類、印鑑など |
出産手当金 | 産前・産後休業中または期間終了後 | 支給申請書、医師または助産師の証明書、賃金台帳、出勤簿、健康保険証など |
育児休業給付金 | 育児休業開始後(勤務先経由) | 育児休業給付金支給申請書、母子健康手帳のコピー、住民票、賃金台帳、出勤簿、雇用保険被保険者証など |
児童手当 | 出生または転入から15日以内 | 認定請求書、請求者の健康保険証のコピー、請求者名義の振込先口座のわかる書類、印鑑、本人確認書類、マイナンバー関連書類 |
子ども医療費助成 | 出生または転入後 | 申請書、子どもの健康保険証のコピー、本人確認書類、印鑑など(自治体による) |
保育料無償化 | 施設利用申し込み時、または別途申請必要な場合あり | 施設利用申請書、就労証明書など(自治体や施設による) |
上記はあくまで一般的な例です。自治体や加入している健康保険組合、勤務先によって手続きや必要書類が異なる場合があります。必ず事前に確認しましょう。特に、マイナンバー制度の導入により添付書類が不要になったり、オンライン申請が可能になったりしているケースもあります。
申請書のダウンロードや手続きの詳細は、自治体のウェブサイトや勤務先の担当部署に確認するのが最も確実です。
妊娠中から育休取得までのスケジュール
妊娠がわかってから育休を取得するまでの期間は、様々な手続きや準備が必要です。以下に一般的なスケジュール例を示します。
- 妊娠初期(~15週):
- 産婦人科を受診し、妊娠を確認。
- 自治体に妊娠届を提出し、母子健康手帳と妊婦健診補助券を受け取る。
- 勤務先に妊娠報告、今後の働き方や産休・育休取得について相談。
- 利用できる可能性のある制度について情報収集を開始。
- 妊娠中期(16週~27週):
- 定期的に妊婦健診を受診。
- 出産予定の医療機関を決定し、予約する。
- ベビー用品の準備を開始(必要なものをリストアップ)。
- 各種公的支援制度の詳細を確認し、必要な書類などを準備し始める。
- 自治体の両親学級などに参加する。
- 夫の育休取得について具体的に話し合う。
- 妊娠後期(28週~):
- 産前休業の開始日を決定し、勤務先に提出。
- 出産育児一時金の直接支払制度等の手続きを進める。
- 出産入院準備(入院バッグの準備)。
- 育児休業の申請手続きについて勤務先と確認する。
- 児童手当の申請に必要な書類を確認しておく。
- 出産後:
- 出生届を提出し、母子手帳に証明を受ける。
- 子どもの健康保険加入手続き。
- 子ども医療費助成制度の申請。
- 児童手当の申請(出生から15日以内)。
- 出産手当金、育児休業給付金の申請(該当する場合)。
- 自治体によっては、産後の訪問支援や育児サービスの申請。
このスケジュールはあくまで目安です。個別の状況に合わせて調整が必要ですが、早めに準備を始めることで、焦らず手続きを進めることができます。
住んでいる自治体の支援を調べるコツ
国が行う制度に加え、各自治体は独自の子育て支援策を実施しています。これらの情報は、お住まいの自治体のウェブサイトで確認するのが最も効果的です。
- 「〇〇市(または区、町、村) 子育て」「〇〇市 妊娠 出産」「〇〇市 助成金」 などのキーワードで検索してみましょう。
- 自治体のトップページにある「子育て」「健康・福祉」「くらしの情報」 などのカテゴリを探してみてください。
- 「妊娠・出産」「子育て支援」「医療・健康」 といったページに関連情報がまとめられていることが多いです。
- 「子育てガイド」「子育てハンドブック」 という冊子を作成している自治体もあります。ウェブサイトで公開されている場合や、母子健康手帳交付時に配布される場合があります。
- 不明な点があれば、自治体の担当窓口(子ども家庭課、健康課、福祉課など) に問い合わせてみましょう。
自治体独自の支援には、新生児聴覚検査費用助成、チャイルドシート購入費助成、多胎児家庭支援、産後ケア事業、家事・育児支援ヘルパー派遣など、様々なものがあります。これらを活用することで、さらに家計の負担を軽減したり、育児のサポートを受けたりすることができます。
忘れがちな「夫の育休」とそのメリット
共働きのご夫婦にとって、夫(パートナー)の育児休業取得は、育児負担の分担だけでなく、様々なメリットがあります。しかし、まだまだ男性の育休取得率は女性に比べて低いのが現状です。
夫が育休を取得する主なメリットは以下の通りです。
- 育児・家事の負担を分担できる: 夫婦で協力して育児や家事を行うことで、妻の産後の負担を大きく軽減できます。睡眠不足や体力的な負担が大きい時期に、パートナーの協力は精神的な支えにもなります。
- 育児スキルを習得できる: 赤ちゃんのお世話はやってみないと分からないことばかり。育休期間中に集中的に関わることで、おむつ交換やお風呂、寝かしつけなど、実践的な育児スキルを身につけられます。
- 子どもとの絆を深められる: 生まれたばかりの貴重な時期を子どもと一緒に過ごすことで、愛着形成が進み、深い絆を育むことができます。
- 夫婦のパートナーシップ強化: 共に育児の喜びや大変さを分かち合うことで、夫婦間の理解が深まり、より良いパートナーシップを築けます。
- 育児休業給付金を受け取れる: 夫も育児休業給付金の対象となるため、休業中の一定期間、給与の代わりとなる収入を得られます。夫婦で時期をずらして取得する「パパ・ママ育休プラス」を活用すれば、子どもが1歳2ヶ月になるまで育休を取得することも可能です。
夫の育休取得は、勤務先の理解や会社の制度を確認する必要がありますが、近年は男性の育休取得を推進する動きも広がっています。夫婦でよく話し合い、会社の制度を確認しながら、取得を検討してみてはいかがでしょうか。経済的な側面だけでなく、家族にとってかけがえのない経験となるはずです。
実際にかかった費用とリアルな体験談(インタビュー・シミュレーション)
ここまで、出産・育児にかかる一般的な費用と公的支援制度について解説してきましたが、実際にどれくらいお金がかかり、どれくらいの支援を受けられるのか、具体的なイメージを持ちたい方も多いでしょう。ここでは、架空の共働き夫婦を想定し、実際にかかるであろう費用と、受けられる支援制度をシミュレーションしてみましょう。
【シミュレーションケース】
- 夫:会社員(年収600万円)
- 妻:会社員(年収400万円) - 妻が産前産後休業、その後1年間育児休業を取得
- 居住地:東京都内のA区(子ども医療費助成は18歳まで、所得制限なし)
- 出産:第一子、自然分娩、個室利用あり(出産費用合計60万円)
- 育児:認可保育園に1歳から預ける
【出産にかかる費用と支援】
- 妊婦健診費用: 合計15万円(補助券で10万円助成、自己負担5万円)
- 出産・入院費用: 60万円
- 出産育児一時金: 50万円
- 自己負担額: 5万円(妊婦健診) + (60万円 - 50万円) = 15万円
→ 出産にかかった実質的な自己負担額:15万円
(※)高額療養費制度は正常分娩には原則適用されません。加入している医療保険によっては入院給付金が出る場合がありますが、ここでは考慮しません。
【育児にかかる初年度の費用と支援】
- ベビー用品初期費用(おむつ、ミルク、衣類、大型アイテムなど): 合計30万円(フリマアプリなども活用して抑えた場合)
- 保育園費用: 1歳から預けるため、最初の1年間は保育料がかかります。世帯所得に応じて算定されますが、このケースの所得であれば月額3万円程度と仮定します。
- 1歳時の保育料(1年間):3万円 × 12ヶ月 = 36万円
- 給食費などの実費負担:月額1万円 × 12ヶ月 = 12万円
- 医療費: 定期健診・予防接種は無料。病気等での医療費自己負担分は子ども医療費助成でゼロ。(※)
→ 育児にかかる初年度の自己負担額(保育料含む):
30万円(ベビー用品) + 36万円(保育料) + 12万円(実費負担) = 78万円
【受けられるその他の公的支援】
- 出産手当金(妻): 産前産後休業期間(約98日)に対して、休業前の賃金の約3分の2を支給。(妻の標準報酬月額を30万円と仮定した場合、1日あたり約6,667円。約98日分で約65万円程度の見込み。)
- 育児休業給付金(妻): 育児休業期間(1年間)に対して、最初の180日は休業前の賃金の67%、それ以降は50%を支給。(最初の6ヶ月で約100万円、その後6ヶ月で約75万円程度の見込み。合計約175万円程度の見込み。)
- 児童手当: 0歳から月額1.5万円支給。1年間で1.5万円 × 12ヶ月 = 18万円。
【シミュレーション結果のまとめ】
- 出産にかかる実質自己負担:約15万円
- 育児にかかる初年度の自己負担(保育料含む):約78万円
- 合計の自己負担見込み:約93万円
- 出産手当金(妻):約65万円
- 育児休業給付金(妻):約175万円
- 児童手当(1年間):18万円
- 合計の公的支援見込み(妻の休業に伴う給付含む):約258万円
このシミュレーションからわかるように、出産・育児には一時的にまとまった費用がかかりますが、公的支援制度を活用することで、その負担は大幅に軽減されます。特に、産休・育休中の収入減をカバーする出産手当金や育児休業給付金は、共働き家庭にとって非常に大きな助けとなります。
先輩ママの声:実際いくらかかった?
「私の場合は自然分娩で、出産費用は55万円くらいでした。出産育児一時金50万円が出たので、自己負担は5万円。個室を使ったり、少し長めに入院したりしたけど、思ったより自己負担は少なかったです。ベビー用品は、お下がりをもらったりフリマアプリを使ったりして、初期費用は15万円くらいで済みました。一番大きかったのはやっぱり保育料。1歳クラスで月4万円くらいかかって、これは痛かったですね。でも、妻の育休給付金と児童手当があったので、なんとか乗り越えられました。」(30代 夫)
「帝王切開だったので医療保険が適用されて、高額療養費制度も使えました。最終的な自己負担は数万円だったかな。妊婦健診の補助券はフル活用したけど、後半の検査が多くて結局5万円くらい自己負担しました。育児グッズは、出産前に張り切ってたくさん買っちゃったけど、使わなかったものも結構あって反省。本当に必要なものを少しずつ揃えるのが賢いなって思いました。児童手当は毎月入ってくるのが本当にありがたいです。」(20代 妻)
「知らなかった」では済まされない支援制度の落とし穴
公的支援制度は非常に役立ちますが、知っておかないと損をしてしまう落とし穴もあります。
- 申請忘れ: 各制度には申請期限があります。特に児童手当は申請が遅れるとさかのぼって支給されないため、出生後すぐに手続きが必要です。
- 必要書類の不備: 申請に必要な書類が揃っていないと手続きが進められません。事前に確認し、早めに準備しておきましょう。
- 制度の変更: 制度内容は改正されることがあります(例:児童手当の改定)。常に最新の情報を確認することが重要です。
- 自治体による違い: 子ども医療費助成や自治体独自の支援は地域によって内容が異なります。お住まいの自治体の情報をしっかり調べましょう。
情報収集を怠らず、計画的に手続きを進めることが、支援制度を最大限に活用するために不可欠です。
不安を安心に変える第一歩は「知ること」
初めての出産・育児は、喜びと同時に「お金」に関する不安を抱えやすいものです。特に共働きのご夫婦にとっては、今後の働き方や家計への影響が気になる点でしょう。
確かに、出産には妊婦健診から分娩、入院まで、ある程度の費用がかかります。そして、赤ちゃんが生まれてからの育児には、おむつやミルクといった消耗品から、ベビーカーやチャイルドシートなどの大型アイテム、さらには保育料まで、継続的にお金がかかります。
しかし、この記事でご紹介したように、日本には妊娠・出産・育児を支援するための様々な公的制度があります。
- 出産費用の一部をカバーする出産育児一時金
- 産前産後休業中の収入を補填する出産手当金
- 育児休業中の生活を支える育児休業給付金
- 子どもの養育費を補助する児童手当(2025年には対象拡大・所得制限撤廃・増額)
- 子どもの医療費負担を軽減する子ども医療費助成制度
- 保育料の負担を軽くする保育料無償化
これらの制度を上手に活用すれば、出産・育児にかかる経済的な負担を大きく軽減することができます。シミュレーションからもわかるように、数百万円規模の公的支援を受けられる可能性もあります。
不安を安心に変えるための第一歩は、「知ること」です。どのような費用がどれくらいかかるのか、そしてどのような支援制度が利用できるのかを正確に把握することが、漠然としたお金の不安を解消し、具体的な備えにつながります。
妊娠がわかったら、まずは自治体に妊娠届を提出し、母子健康手帳と妊婦健診補助券を受け取りましょう。そして、この記事を参考に、出産費用や育児費用、そして利用できる公的支援制度について、夫婦で話し合い、情報収集を進めてください。お住まいの自治体のウェブサイトや窓口で、最新かつ詳細な情報を確認することも忘れずに。
計画的に準備を進め、「備える」ことで、お金の心配を減らし、より安心して赤ちゃんと向き合い、子育てを楽しむことができるでしょう。新しい家族を迎える素晴らしい時期を、心穏やかに過ごせるよう、この記事がお役に立てれば幸いです。
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